確か村上龍氏の言であったと思うのですが、父と息子が心を通わさせる最適な方法は幼い息子とのキャッチボールであるとのことです。父親は息子になるべく取りやすい球を投げる、息子は認めてもらおうと真剣に球を受け、力を込めて投げ返す。父はどんな暴投であっても、必ず取りに行く決意をしている。それが心の真の意味での交流だと。
野球の世界は少年たちのリトルリーグから、メジャーリーグのスター選手までレベルの違いがあります。個人的には、どちらが良いとか悪いとかはなくて、楽しむことができればそれで良いと考えます。
本の世界でもそれと変わらない考えを、私は持っています。
『三秒間の死角』<上><下>(アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム 著)<角川文庫>
紛うことなくメジャー級の小説です。警察小説であり、犯罪小説であり、悪漢小説であり、恋愛小説であり、ルポル・タージュであり、ノンフィクションであり、(日本でいうところの)純文学でもあります。
大規模麻薬組織を壊滅させるために、その組織の幹部となり、刑務所のドンとなるべく依頼を受けた”民間の”潜入捜査官。
裏切られ、蔑まれ、切り捨てられた、世界で一番孤独な男。
殺されるかどうかより、いつ殺されるかに体と心を震わせる男。
100%逃げ場がない状態で、自身の感情を殺していく男。
潜入捜査官のコードネームはパウラ。
愛する妻と可愛いふたりの息子を持つ男の本名はピート・ホフマン。
家族以外、世界中が殺したがっている男。絶望と孤独の体現者。
キーワードは<チューリップと詩>です。